児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援・相談支援 ヴィキッズ/ヴィキッズ・ジュニアのブログ

京都府向日市にある、 ヴィキッズ/ヴィキッズ・ジュニアのブログです。児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援、相談支援など、子育ての幅広い困りに寄り添います。

障害の解決へのアプローチについて

 ヴィキッズに寄せられる相談の中でも、比較的多いのが、学習障害に関するお問い合わせです。中でも、ここ最近続いたのが、識字障害(ディスレクシア)についてです。

 識字障害には様々な要因が存在するため、一概に「これが解決方法です!」といった簡単なことは言えませんが、私達は、その子の困りがどこにあるかを丁寧に読み解きながら、困難の解決に向けて、支援を続けます。

 

 識字障害に限らず、広い意味での「障害」を「克服」するためのアプローチとしては、

1.本人の努力

 練習やリハビリによっての「克服」

2.技術による解決

 メガネや車椅子、デジタルデバイスなどの道具や技術によって解決する

3.環境づくり

 バリアフリー思想による建物の設計や、サポートする人員の配置、周囲の理解など

 

 どうも学校というところは、修練主義といいますか、1のアプローチのみに重きを置く傾向が強いのですが、2,3のアプローチも、1以上に大切です。

 例えば、識字障害に関しても、教科書のフォントを変えるだけで、かなりの改善効果がある、といったデータもあります。

www.projectdesign.jp

headlines.yahoo.co.jp

 

 問題は、障害の「克服」は、何のために行うかということです。

 文字の読み書きが難しいときの技術的な解決のアプローチとしては、こうした

・「デジタル教科書を使ってフォントを変える」

という以外にも、

・「キーボードで文字入力を行う」

・「音声入力を行う」

・「音声読み上げソフトを使う」

・「1行ずつハイライトしてくれるソフトを使う」

など、様々な手段が考えられます。

 しかしどうも修練主義に染まった方は、「100万回書いて覚える!」といった方向に行きがちです。

 本来は、文字の読み書きはあくまで手段であって、「人とコミュニケーションをとる」「本や教材という文化にアクセスする」ということが目的のはずです。手段と目的を取り違えることは不幸です。

 実際、大人が仕事をするときに、手書きで文字を書く機会は現在どれだけあるでしょうか(もちろん、それが必要とされる職種はありますが限定的です)。実際には社会でそれほど要求されない能力について、「こども時代は苦労してでも頑張れ!」と言うことは無責任です。

 視力が悪い人に、「眼鏡なんて使わずに、視力トレーニングをしろ!」、足が悪い人に、「松葉杖や車椅子を使わずに、自分の足で歩くように努力しろ!」と言うでしょうか。形や数値として現れにくい困難を持つ人は大勢います。

 極端に聞こえるかもしれませんが、私達は、計算が苦手なら電卓を使えばいい、お箸が苦手ならスプーンを使えばいいと思っています。手段を過剰に重要視することによって、「計算結果を求めること」「食事を楽しむこと」という目的が阻害されてしまっては元も子もありません。

 もちろん、一定程度の努力は大切です。困難を克服する喜びもあります。しかし、私達は、ありとあらゆる場面で、「できるに越したことはない」ということと、「無理にでも頑張れ」ということを履き違えない指導や支援を大切にしています。

 実際、これまで受け持った子どもたちの中には、作文用紙に文字を書くのが苦痛で感想文などが書けなかったが、キーボード入力を覚えてからは、いくらでも書けるようになった、という子どももいます。文字の練習に過剰に時間を取られるよりも、アウトプットの代替手段を用意することが大切だという好例です。必要なのは、無駄な努力ではなく、その子にあった、その子が必要な支援だということです。