新しいゲームへの不安
ヴィキッズでは、これまでブログでも書いてきましたが、ボードゲームを活用した療育をおこなっています。
管理者がもともと趣味で収集していたもので、毎週のように新しいゲームが増え続け、すでに200種類を超えています。
新しいゲームが事業所に届いたときの子どもたちの反応は、というとどんなものを想像されるでしょうか?
「先生、それ何!?」
「新しいゲーム?やってみたい!」
新しいおもちゃが届いたときの子どもたちの反応といえば、一般的にはこうした言動が予想されそうです。
しかし実際には、新しいゲームへの不安感を示す子どもたちは、少なくありません。
「新しいゲームが届いたし、これやってみない?」と誘ってみると、
言葉に出さずとも、
(自分だけルールがわからなかったらどうしよう……)
(慣れてないゲームで、うまくプレイできなかったり負けたりしたらどうしよう……)
といった表情を浮かべ、
「先生!それよりこっちのやつ(以前からあるゲーム)がしたい!」
「そんなん面白くないし、いつものやつやろう」
などと拒否して、自分がプレイに習熟していたり、勝利した経験のあったりするゲームをやりたがる子どもが、少なからずいます。
あるいは、新しいゲームに限らず、一つお気に入りのゲームができると、周囲が飽き飽きしていても構わず、延々と同じものをやりたがったりします。
発達に困難を抱える子どもたちにとっては、新たな経験をするたびに、こうした場面が日常的にあったのでしょう。
・みんなが当然のようにできている勉強ができない
・かんたんな運動ができずに笑われた
・鬼ごっこなどのルールがすぐに飲み込めず、「なんでルール違反するんだよ」などと言われた
・みんなが面白がっている冗談がよくわからず、「空気の読めないやつ」とレッテルを貼られた
など、幼児期から学齢期にかけて、本来は楽しいはずの遊びの場面でも、うまくいかなかったり、失敗したり、恥をかいたり、という場面を、多く経験してきたのだと思います。
そうした子どもたちにとっては、「ゲーム」という楽しいものであっても、新たな経験は負担に感じるようです。
私達は、そうした子どもたちが集団へと参加するときに、適切に介入、サポートしていきます。
「最初は先生と一緒のチームでやろう」
とペアになって、ルールを教えながらプレイしたり、
「サイコロを振るだけ(カードをめくるだけ)でいいから一緒にやってみよう」
と役割分担をしたり、
ときにはわざと負けたり失敗してみたりすることで、
(先生でも失敗するから大丈夫か…)
という安心感を持ってもらったり、
「協力型」と呼ばれる、競争ではなく共通の目的に向かってプレイするゲームをしたり、こどもたちの発達段階や好みに適したゲームを探したり、
と、とにかく様々な手立てで、参加へのハードルを下げる工夫をします。
たいていのゲームは、プレイしていればそのうち、なんとなくルールや勝ち方も見えてくるものです。そして、こどもたちが試行錯誤の中で、そうした発見をしていくことは、何よりも学習効果の高いことなので、過度な介入は避けながら、とにかく「参加」の道筋をどう作っていくか、という工夫を、いつもスタッフ間で話しています。
そうしていくと、
「初めてだったけど、やってみたらできた!おもしろかった!」
「最初はよくわからんかったけど、だんだんわかってきた!」
「先生、もしかしてこうやったら勝てるんちゃう?」
「1年生なのに、6年生や大人に勝てた!」
などと、小さな発見や成功体験を積み重ねていくことを、とても大切にしています。
「ゲーム」という手法は、小さな成功体験を積み重ねるのに、とても適しています。こうした経験が、こどもたちの自己肯定感の核になると信じて、療育をおこなっています。